現在読書中の本です。
まだ第1章を読み終わったばかりではありますが、すごく面白い内容。
読み進めていくうちに、結論や今持ってる感想が変わるかもしれないですけど、第1章を読み終えた時点、見てきた現状や子供たち、自身の過去を重ね合わせ、考えるところがありますね。
エリートアスリートは一般と何が違うのか。
結論からいうと、エリートアスリートは身体的な違いよりも、競技中に次に何が起きるかを、より少量の視覚的情報、より短い時間で察知できる能力に優れているようです。
マクマスター大学のジャネット・スターク教授が1975年に行ったスライドを使ったオクルージョンテストをはじめとした検証で、エリートはスライドからより多くの必須情報を抽出することができることが分かりました。
バレーボール、クリケット、テニス、ボクシング、野球、バスケットなど様々なスポーツにおいて、競技力がある個人の能力は、先天性の身体能力より、競技への理解を基にした有益情報を得る力、いわゆる「読み」の鋭さが大事になっているとのこと。
展開、競技、競技中の特定のスキルを理解し、それらを無意識の中で実践する力を高めるためには、それらの向上にかける時間が必要になります。
1993年、伝統的に多く国際的なバイオリン奏者を生み出している西ベルリン著名な音楽アカデミーにて、3人の心理学者が趣き、ソリストとして生きていける「ベスト」のバイオリニスト10人、オーケストラで演奏できる「グッド」のバイオリニスト10人、音楽教師がキャリアハイとなる10人を対象にインタビューを行いました。
すると、ベストとグッドのグループが週24.3時間を自主練に費やしているのに対し、それ以外は週9.3時間しか費やしておらず、また、ベストとグッドが練習と回復を中心の生活を送りながら週60時間を睡眠に費やすのに、それ以外のカテゴリーの睡眠時間は週54.6時間に留まっていたことが判明。
楽器を初めて手に取ってから、ベストはより低年齢で多く練習に費やし、12歳になるまでに、音楽教師のカテゴリーより1000時間多く練習していました。
ベストとグッドはアカデミーで同じだけの時間を音楽に費やしていますが、18歳になるまでにベストが平均7,410時間を自主練に費やしていたの対して、グッドは5,301時間、音楽教師のカテゴリーに至っては3,420時間と大きく違っていたようです。
これについては、ピアニストにも上記と同様の結果が確認できたとのこと。
従って、スキルレベルとトレーニングの時間には相関性が認められると結論付けられ、2009年のフロリダ州立大学のエリクソン教授による論文「TOWARD A SCIENCE OF EXCEPTIONAL ACHIEVEMENT」中の「プロアスリートになるためのDNAはすべての健全な人々に存在し、違いを生む要素は、DNAでなく個人のトレーニングヒストリーであるとの結論も紹介されています。
人々が何かにおいてエキスパートになるためには10,000時間が必要だという原則はあまりに有名ですけども、アスリート育成には幼少期からトレーニング時間を確保する必要があるようですね。
エリクソン教授は練習時間に加える形でDNAの違いも影響するとしてますが、たくさん時間を費やした方が、どんな世界でもエリートになる可能性が高いとのこと。
スポーツジーンの内容をベースに競泳を見た時、良いスイマーになりたかったら、よりたくさんの時間に競技に割いて、しっかり休養を取る方が良いということを子供たちに伝えるべきで、この本の記述はエビデンスとして用いることができるなと感じます。
日本のスイミングクラブでの練習は、1日1回の2時間の練習なら週6回練習したとして12時間程度、朝練があるとすれば週8回として、16時間ほどと計算できるわけですが、
仮に朝練がないクラブに所属していたとしても、早起きをして学校に行く前に、陸上での自重を使ったトレーニングをしたり、練習前や就寝前にレース分析のビデオなどを見て、自身とトップ選手を比較するなどに時間を費やさないと、エリートにはなれないということになりますね。
世界水泳などに出場、短水路日本記録の樹立、ユニバーシアード銀メダル、などが自分のキャリアになります。
オリンピックに出ていないので、これらをエリートのカテゴリーに含むべきは判断できないんですけど、選手クラスに入った時から、陸上トレーニングを父親に指導されていたり、居残って練習したり、日本の師匠にあたる坂井先生と遅くまで話し込んだり、練習出発前に必ずマイク・バローマン選手のバルセロナ五輪200m決勝レースのビデオを繰り返し見ていたりしていた歴史はあって、
ここでの記述と関連付けて考えることができる点はかなり多いかなと。
子供たちがエリート競技者を夢見る時、10,000時間に及ぶ熱中と努力が必要で、眠い目を擦りながら頑張る日々が対価として必要だということです。
ちなみにこの本には日本語版があるんですよね。
スポーツ遺伝子は勝者を決めるか?──アスリートの科学 (ハヤカワ・ノンフクション文庫)/早川書房
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